アルの日記

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花月五日(晴れ)  今日は学院の入学式だった。  入学式の手伝いに駆り出される破目になって非常に疲れたよ。  なんで俺がこんなことをやらせれなければいけないのだろう。新入生のほとんどが俺よりも年上だからやり辛いことこの上ない。新入生たちは俺を在学生とすら認識せず、邪魔な子ども扱いをしてくる。俺は上級生だぞと何度大声で訴えたくなったことか。  しかも、俺が在学生だと知ると露骨に態度を慇懃無礼だろってくらい変えるのに、内心はずっと疑っているのが丸分かりだ。  俺を子供だと思って侮りすぎだろ。子供相手に内心を悟られるなよ。  だが、最も印象的だった新入生はそんなくだらない奴らじゃない。俺よりも年下の新入生がいたんだ。  カイ・テータ君とイェリ・シェシー君。それぞれ魔法薬学科と精錬薬学科の13歳。普通なら薬師に弟子入りするかしないかといった年齢だ。  彼らは一種の天才、それも運に恵まれた天才なのだろう。一級三種の師を持ち、学院の新入生ながら診療所を開設できるだけの腕があると師より認められているのだから。  まあ、それを知らなければ、常識すら知らないただの田舎者だが。  しかし、それ以上に彼らに対してふざけるなと叫びたくなることがあった。  彼らは魔法薬学や精錬薬学を一般薬学より簡単だなどと言い放ったのだ。しかも、魔法薬学や精錬薬学は感覚でできるから楽などと!  一般薬学は、ほんの少しなら分量比が変わっても効能にさして影響はないが、魔法薬学や精錬薬学は違う。  魔法薬学は、少しでも加える魔力量を間違えると全く違う物質になってしまう。精錬薬学は専門でないから詳しくは知らないが、それでも魔力操作を誤って間違った成分を少しでも破壊してしまったら、効能が失われてしまうことくらい俺でも知っている。  そんな繊細な技術と高度な知識が要求される魔法薬学や精錬薬学の製薬調合を、感覚でやっているなど危うくて仕方がない。それ以前に、すべての薬師を侮辱する言葉にすらなる。
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