第1章

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男はくわえていた煙草を手に持ち替えると大きな欠伸をして首をコキコキと鳴らした。 疲れているせいか実際よりは少し上に見えそうな外見は、何故か哀愁の漂うテレビドラマに出てきそうな刑事に似ていた。 「で?かんいちクンだっけ?」 「神田誠一です。」   「俺一応ここの責任者なんだけど社長からも誰からもそんな話聞いてないよ?」   「・・・・・・え。」 一瞬にして頭が真っ白になった気がする。真っ白か・・・ああ、冬に地元に帰ったら雪で一面真っ白なんだらうな。 去年どこかに直したスキーウェアを引っ張りだして滑りに行かないとな・・・・。じゃなくて。 一つの言葉から人間はさまざまなことを連想する。 わずか三秒の間でも脳内ではいろんな妄想や想像が広がり、一気に活性化されてフル回転する。 だいたいは現状の話に全く関係がないことが多い。
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