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「と、言いたいところだが、先程も言った通り、残念ながら俺は神田クンのことは何も聞いていない。」
篠原は両の手を自分の胸の前でグーパーしてみせた。
「つまり、ここの責任者の俺が知らないってことは君はここじゃない。」
「いや、でも、ちゃんと書類とか書きましたし、社宅の手配だって・・・」
神田は篠原の手を掴むはずだったやり場のない右手を静かに元に戻しながら、早口で篠原に説明する。
「うん。だから、神田クンはここじゃなくて地下一階の部署だね。」
「地下一階ですか?」
「そう。会社はここであってるけど、働く場所が違う。地下一階にでんせつの部屋があるからそこだな。」
なんだそのいかにもな名前の部屋は。
神田は頭にはてなを浮かべていそうな顔をして眉をひそめる。
「・・・でんせつの部屋ですか?」
「そ。でんせつの部屋ね。大丈夫、部屋のドアの前にプレートがかけてあるから間違えないよ。」
「いや、あの・・・でんせつの部屋ってどうゆう「おっと、それは答えられないな。」
今までのふざけた様子からは変わり、篠原は真剣な顔をする。
元々目つきの悪い顔立ちがより一層険しくなった。
「これ以上何か言うと俺の命に関わる問題になってしまうからな。」
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