第1章

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吐き出された息はヤニの臭いがきつく、少しだけメンソールの臭いも混じっていた気がした。 篠原はニヤリと笑ってまた煙草を懐から取り出して火を点ける。 「ま、あれだな。」   煙草の煙をゆっくりと吐き出しいて篠原は神田を見つめなおす。神田はゴクリと唾を飲み込む。 入社初日から一体何を聞かされているのか・・・。いや、そもそも俺は入社出来ているのか。不安なんてものじゃない。 そんなもの通り越して意味がわからない。 篠原が吐き出した煙を目で追うことしか出来ない。 「気を付けることだ・・「あなたは後頭部に気を付けるべきだと思いますよ。」    バシンッッッッ    何かを思い切り叩く気持ちの良いくらい綺麗な音がした。 煙草から出ていた煙は神田の足元の方から宙へと消えていく。 先程まで篠原が咥えていた煙草が落ちたのだ。 その煙草も一瞬にして新たな革靴によって踏み消された。
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