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「篠原さん、ここは禁煙区域ですよ。あなたのせいでビルの他のテナントの方から苦情が来ているのですから自覚をしてください。」
新しい声の主は淡々と言う。落ち着いていて、どこか物腰柔らかで、でも少しきつめの声。
神田は消された煙草から視線をすぐ目の前の相手へと戻す。
篠原は痛いと言わんばかりに両手で後頭部を抑えて悶えている。
いつの間にか篠原のすぐ隣に切れ長の目をした篠原よりも若そうなしっかりとしたスーツを着た青年が立っていた。
「いてててて・・・。何も殴らなくてもいいじゃねーか、おうちゃん。」
「須藤です。何ですか、おうちゃんって。あなたが喫煙している上に今日から入社の新人に嘘を吐くからでしょう。」
顔色を変えずに須藤と言った青年は淡々という。
顔色が変わらないというより、目が切れ長すぎて開いているのか、閉じているのかわからない程である。本当に目がない。
世に言う狐のような目をした男は漫画やゲームの世界では何かにつけて読めないキャラであり、正統派イケメンキャラに負けず劣らずに人気の場合もある。
果たして現実世界ではどうなのだろうか・・・なんて考えている神田にその青年はきちんと身体を向き直す。
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