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ビルの三階に警備会社は入っており、他の階は全く別の会社が入っている。
どこの中小企業もそういうものだろう。
第一印象が大切だ。神田はそう自分に言い聞かせて、『(株)有馬警備』と書かれたドアの前に立つ。
よし、今日からまた一正社員として働こ「おはようございます。うちの会社に何か御用ですか?」
後ろから聞こえてくる言葉と同時にきつい煙草の臭いが鼻をつく。
今吸っている煙草だけじゃない、身体中に染みついているヤニの臭いだ。
フーと煙草を吸う音が聞こえる。
ビルの壁にはビル内喫煙区間以外禁煙という張り紙が貼られている。神田はゆっくりと後ろを振り向いた。
お世辞にも目つきが良いとは言えない男が不機嫌そうに煙草をくわえて立っていた。
世間一般で言う端正な顔立ちをしていて、くたびれたスーツとネクタイもだらしなさよりもその男が身に纏っていると、何故かさまになっていた。
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