出雲大社

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一  占い師。と聞くとまず浮かんでくるワードは、 『いんちきくさい』 『うさんくさい』 『詐欺師』 『おまえに人の何が分かるのか』 『斜めから見てやろう』 『ひやかしてやろう』 『くだらない』 『興味ない』 『キモイ』 『ふっ(薄ら笑い)』  といった感じが多いのではないだろうか。  そして、占い師を頼ろうと思う場合に多いのは、『迷っているとき』ではないか。もしくは、『誰かに背中を押してもらいたいとき』  あなたの心の隙間をお埋めいたします。  とはどこぞのおっさんのことばだがしかし、ここにもその手の占い師が今日ものほほんと暮らしていた。  ただ彼の場合は、『いろいろなものが視えている』占い師である。  ぶっちゃけ、視えているんだから占い師でもなんでもないじゃないかと突っ込みたくもなるけれど、本人が占い師と言いはるのだから仕方がない。  つまり、この世ならざるものが視えてしまう特異体質であり、またそれらとコンタクトを取ることを売りとしている、いわば、自分の力を『金策』としてお悩み解決をしているわけである。  そしてこの特殊能力を惜しみ無く遠慮なくフルに発揮し、がっしがしっと金を稼いでいる。それを生活の基盤として大好きな猫たちと新宿の地下に仕事場件自宅を設け、お気楽に毎日を一切頑張ることなく過ごしていた。 なんせ頑張ることが嫌いな彼は頑張らないことを頑張っていた。  性格に癖がある占い師は今日もあなたの心の隙間にお高い万円のお靴でずかずかと、土足で上がります。  礼儀? そんなもの持ち合わせていたらこんなあこぎな商売、しませんて。
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