出雲大社

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二  新宿駅からほど近い路地の裏の裏、の裏辺りに地下に降りていける小道がある。という噂を朝倉湖(あさくらみずうみ)が聞いたのはいつものバーでダラダラとニート生活を満喫しているさなかだった。  カウンターでだらしなくテーブルに顔をつけていると、後ろの席で女子力高めの二人組が話している内容が気になった。 『新宿にめちゃくちゃ当たる占い師がいるんだって』 『しかも、見ただけでなんか分かっちゃって、こっちが何も言わないのにずばずば言ってくれるらしいよ』 『でも、そこって見つけられるかどうかはその人次第だとか』 『なんでも、その占い師に出会うべく人だけが探し当てられる場所って話だし』 『時間はいつでもいいんだって。そこでばったり黒猫に会ったら着いていく。そうするとその占い師の元にたどり着けるって話だよ』  といった内容の話を盗み聞きしてから数日後、頭に記憶したメモを元に、こうして新宿くんだりまで足を延ばしたわけである。  午前十一時。 混んでもいなく空いてもいない。  無職ぷー太郎な湖は、こんな時間にも関わらず出歩くことができる。  朝は気の向くままに起きて、ぼけっとし、昼は朝の延長でテレビを垂れ見して、夕方食材の買い出しに出、夜は昼からの延長のテレビをダレ見してぼけっとする。  こんな生活、五日で飽きた。  平日毎日忙しなく仕事をしている時はこういう生活に憧れていたけれど、いざそういう時間を過ごしてみると、何もすることがないっていうのはほとほと地獄だなと感じた。  いつまでもダラダラしていても仕方がない。これまでの自分にサヨナラして、新たな道を進みたい。そんな考えが出始めたころに聞いたあの話。  とりあえず誰かに背中を押してほしい。なんでもいいからアドバイスを聞きたい。  黒ネコ黒ネコ黒ネコ……  ねこねこねこちゅちゅちゅちゅちゅ……  と、猫を呼びかけてみても、路地裏を通過中の三毛猫さんにめんどくさそうに睨まれたり、バイクの上で日向ぼっこしているサバトラさんに無視されたりと、お目当ての黒猫にはなかなか出会えない。  まだその時期じゃないんだろうか。その占い師に出会うタイミングじゃないんだろうか。  だとしたらどういうタイミングがいいタイミングなんだろう。
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