232人が本棚に入れています
本棚に追加
「幽霊の正体見たり枯れ尾花ってところかな、君たち二人の言うところは。それで話を続けると、君が最後に彼氏と話したのは電話越しだった。しかもすごいノイズだったんだよね。それ以来会ってない。今も連絡つかないんだよね?」
「はい、ぜんぜんまったく連絡がつきません」
「それなら、ちょっと君の電話貸してくれるかな」
「いいですけど」
高宮がかばんの中に手を入れて電話を出そうとしているのを横目に出雲大社はモカを一口口に入れ、
「うん、おいしいね」
と独り言を言った。
褒められたらそれはそれは嬉しいけれども、結局スティックコーヒーだし。サンドイッチを褒められたい気持ちが強い自分に驚いた。
「すみませんあの、電話、忘れてきてしまったみたいで」
「そうなんだ。じゃ、取りに行こう」
「今からですか」
高宮は行きたくないように見えた。顔が嫌そうに歪んでいた。
「君の問題を解決しよう。じゃないt今のままじゃ無理。見つけられない。見つけたとしても入れない」
よくわからないことを言っているが、きっと彼の中では答えは出ている。最後まで分かっている。もしかしたらこの性格の悪さで私たちを混乱させて楽しんでいるのかもしれない。
でもぜんぜん私には何がなんだかわからない。と湖は眉間に皺をこしらえて唸った。
『予知してよ』
って声が聞こえてきそうだけど、あえて考えないことにした。
「よし、それじゃあ早速君の家に行ってみようか」
高宮の返答を待たずに席を立つ出雲大社に続き、湖も急いで財布と鍵を取りに台所へ向かう。
前回の事件で、出雲大社が家を出るときは湖も一緒に行くことと、その時には財布、それから入り口の鍵をかけることを勉強した。
「君の家に行って電話を取ってこよう。この間に彼から連絡がきているかもしれないよ」
「……分かりました」
なぜか乗り気じゃない高宮を半ば強引に誘導する出雲大社は奇妙な笑みを浮かべている。
入るなと言われている出雲大社の部屋の前から動かないノリコと母猫は相変わらずじっと眺めているだけで近づいてこない。
「朝倉君、ボーっとしてないで、行くよ。突っ立っててもなんの解決にもならないからね」
「はい、すみませんただいま」
軽い暴言は受け流し、急いで用意をして鍵を持ち、入口へ走った。
最初のコメントを投稿しよう!