【2】高校生のお悩み、解決します

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『まだ意識があるのか。まあ、それもあと少し。さあ、アノヒトの携帯電話を探そう。それをどこか遠くに捨てなくちゃ。誰にも気づかれないところに持っていかなくちゃ。あれが見つかったら困る。私、困る。困る。困る』 「携帯電話が……どこにあるの」 『この森の中にある。私一人じゃ探せない。だって、私には物が触れない。あなたがいないと探せない。ねえ、助けてくれるんでしょう? あなた、あの電話のありか、知っているんでしょう? 見たんでしょう?』  森の中の風景が目の前にモノクロの写真としてはじき出された。足は無意識にもずるずると森の中へ向かう。木の枝を踏んだ音が耳の奥の方で聞こえた。  下に目をやればそこには私の足が映っている。自分の意識とはうらはらな行動。 『あれさえ見つければ、私は彼に連絡ができるの。そうしたら彼の居場所も分かるはず』 「どこにあるの……電話」 『……思い出せない。でもここ。この森の中。ここのどこかにある』 「……苦しい」首を抑えた。呼吸が苦しい。 『その苦しみももう少しでなくなる。その苦しみは一体化する前にあなたの体が抵抗している証拠。私は受け入れているからすぐに楽になる』 「ふざけるな。誰が一体化なんてするか! 絶対……し……」 『ああ、そう、ここここ、覚えがあるわ。この森、このあたり、私、歩いた』  手を、指を指した場所には枯草が山のようになっていて、湖はそこへしゃがみこんで穴を掘り始めた。 周りには誰もいないんじゃないかって思うほど静かで、掘っている音さえ聞こえない。  何十分、いや、何時間か堀り進めたところで指先に固いものが当たった。 『これだ』  不気味な声が自分の口から発せられていることに鳥肌がたつと同時に反射的に体が飛び跳ね、後ろに飛ばされ木に背中を勢いよくぶつけた。
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