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八
『彼女は……』
腐っている(本物の)高宮の話だとこうだ。
高宮(目の前に居る)とその隣にいる同じく腐った高校生男子(これが高宮の彼氏で藤巻春という)は付き合ってまだ四か月の何をするのもドキドキあふれるときだった。
本野裕子はそんな藤巻春に恋をしていた。何回告白しても首を縦に振らなかった藤巻が知らぬうちにクラスメイトの女子生徒、高宮と恋人関係になっていたことに腹を立て、嫌がらせをしてきたということだ。
別れなきゃずっとつきまとってやると高宮に言い、精神的に参らせようとしていた。
自分の思惑とはうらはらに、二人の結束は増々強くなっていき、余計にお互いがお互いを大切だと思うようになっていった。
いわば逆キューピッドに成り下がった本野裕子はいじめがエスカレートしていき自分の中だけで物語のストーリーを作り上げ始めた。
あるとき、本野裕子は高宮に恋愛相談があるから聞いてほしいと話を持ち掛けた。しかし今までずっと嫌がらせをしていた人がそう簡単にころりと変わるのもおかしいと感じた高宮は、何かとその相談を引き延ばすように、二人だけで会わないようにしてきた。
なかなか落ちない高宮に本野裕子は煮えたぎる腸をおさえ、SNSで手に入れた嘘の写真で高宮を釣った。
「これが私の気になっている人。今までごめんね。もう嫌がらせなんてしないからさ、だからお願い。相談乗ってくれないかな。話せるのってほかにいないの」
拝み倒したという。
写真を見せられたらそれはそれで納得してしまうだろう。
それなら分かったとばかりに高宮は相談に乗ることを約束した。
指定された日、二人は一緒に並んで歩きながら時折笑いを交えつつ話をして行きついたところはここ。森だ。
高宮を森の中に連れ込んだ本野裕子は、
「ねえ、藤巻君と別れなよ。じゃなきゃ殺すよ」
と。出刃包丁を構えて脅しにかかった。
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