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足に力をこめ、走り出そうとしたところで、
「はい、そこまでだよ」
出雲大社の声が辺りに響く。
「ほかにも誰かいたのか。クソ」男は唾を吐き、くすんだ目を最大限に開き辺りを確認した。
「出雲さん!」
助かった。湖は出雲大社がいたのをすっかり忘れていた。
柔らかな風が抜けた。
目の前の木々が左右に抜け、その真ん中には腕組みをした出雲大社が立っている。出雲大社を中心に左右に制服を着た警官がたくさんいた。赤灯を回したパトカーが数台、無線で話しているのが目に入った時、後ろでがさっと音がした。
いつの間にか警察官に囲まれていた湖とこの気味の悪い男、いつから囲まれていたのかは知れないけれど、とにもかくにも湖は安堵した。反対に男は逃げ道がないかと辺りに目を走らせていた。
「発見しました! 三体あります!」
少し離れたところの土の中に埋まっている死体を発見した警官の一人が声を上げた。
高宮、藤巻、本野。
三体は彼らの事だろう。
「朝倉君、よく頑張ったね」
「……」
じっと睨む。頑張ったねじゃないよ。
「顔顔。悪い顔なんだから嘘でも笑わないと」
「出雲さん、なんで一緒に来てくれなかったんですか」
「何言ってるの。今こうやって入って来て一緒にいるじゃないか」
「今じゃなくてさっきです」
「ああ……それはさー、」
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