出雲大社

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「ちょっと、占い師さん、何やってるんですか」 「来て」 「来て?」 「早く」 「なにしてるんですか」 「なにって、コーヒーを」 「スティックコーヒー、鍋に入れてどうすんですか」 「コーヒーって鍋で煮るもんでしょ」 「アフリカとかその辺りの森の奥地で、鍋で煮る調理方法が主流な国ならもしかしたらそうかもしれないですけれど、これは違うと思います」   湖はスティックコーヒーをそのまま鍋に入れた男にやはり違和感を感じた。 「ああ、だからコーヒーの色が出なかったのか」  ぽんと手を打った男は、謎が解けたとばかりに笑顔になった。 「まさか、アフリカにいたことあるんですか?」 「あるよ。西アフリカの奥地の黒魔術は素晴らしいからね」 「黒魔術って人を呪うやつですよね」 「それだけじゃないけど。じゃ、そゆことでコーヒーよろしく。俺あっちいるから」  自分で淹れると言ったのに、湖にコーヒーを淹れさせることにして、己はさっさと台所から出て行った。  ぶつぶつもんくを言いながら鍋の中に浮かんでいるスティックコーヒーを救出し、ふつうにコーヒーカップに中身を入れた。  鍋はひっこめてやかんを取りだしお湯を沸かす。沸騰するまでやることもないのでふと目を横に向ければけっこうしっかりした台所だった。  業務用のものなのだろうか。一通り調理器具も揃っていて、きっちりと片付けられていてる。お皿もコップも全て白で統一されていてた。 「なんか、よく分からない人だな」  これが湖の思った男に対しての第一印象だ。  そんな湖の胸の内を勝手に読み、テーブルについて猫と戯れている男の顔が緩み放題で、猫に、『全部わかっちゃうのにねえ、だめな人ですねえ』などと言ってることなんて湖は想像もしてなかった。
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