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不安な気持ちを聞いてもらって、〝それでいいんだ”って言ってもらえて心が楽になった。
「ありがとうございます―…橋本課長」
そうお礼の言葉を伝える。けど、
「……」
橋本課長はなぜか黙ってしまう。
「橋本課長?」
「しっ」
「(しっ……?)」
人差し指を口元で立てて〝静かに”のジェスチャーをされる。それに周りを気にしてるっぽい。いきなりどうしたっていうんだろう……
変な橋本課長。と思っていると、
「高垣ちゃん。高垣ちゃんって、やっぱり可愛いね」
「え……いきなり何を―…」
「インフォの制服姿を見慣れてるけど、私服姿の高垣ちゃんもいいね」
何だかいきなり褒めてくる。まぁ、可愛いって言われて悪い気はしないし、むしろ的を得ている言葉だから、こんなタイミングで改めてですか?って感じではあるけど……
「あ、ありがとう……ございます……」
「秋の夜風は心地良いけど、ずっと外にいると寒くなったんじゃない?」
「肌寒くなってはきてますけど……」
「知ってる?ここの旅館に凄く良い混浴の温泉があるんだって。あ、でも、混浴だと他の人もいる可能性があるから、家族風呂なんてどう?まだ色々悩みがあればゆっくり二人で温泉に浸かりながら聞くよ」
ニッコリ、爽やかなスマイルで、若い女子社員を家族風呂に誘ってくる既婚者の橋本課長。
しかも、内容が内容なのに言い方も、さらり爽やか……
まぁでも、この橋本課長だ。
何時もの橋本課長だからセーフなジョークで、真に受けるだけ無駄。
「橋本課長、またそんな―…」
冗談を言って、と呆れながら返そうとした。
と、その瞬間、
「寧々ちゃん―…っ!」
いきなり聞こえてきた私を呼ぶ大きな声。
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