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橋本課長の背中を見送ると、私と大輝、ぱちりと瞳が合う。
「俺、また課長に―…」
「やられちゃったね」
私、ついクスッと笑っちゃう。ごめんね。大輝が一生懸命に橋本課長に立ち向かってくれたのに。
でもね、嬉しい。何度でも〝愛してる”って言われると嬉しいの。
不安な気持ちを大きく膨らませちゃった後だから、なおさら。
「それにしても大輝、本当に一直線に向かっていっちゃったね」
「いや、あれは……っ、あまりにも橋本課長と寧々ちゃんが近かったから引き離そうと……」
「近かった?」
「近いよ!」
「けど、この旅行の間、大輝は柴崎さんとベッタリだったじゃない」
「寧々ちゃ―…」
「なんてね。またヤキモチ沢山焼いちゃってたの。でもね、今はもう大丈夫。柴崎さんのことキッパリ断って、勘違いでも私を守りに来てくれたんだよね。ありがとう、大輝」
「寧々ちゃん……」
少しの間、見つめあった後、大輝はぎゅっと私の身体を両手で抱きしめてくれた。
でも―…
「つめたい……」
濡れたままの姿で抱きしめられたものだから、冷たくて、私まで水濡れ……
「ごめんっ!寧々ちゃん……!」
「今更慌てて離れたって遅いよ……」
「と、とにかく風邪ひくと困るから着替えして―…」
「の前に、温泉」
「温泉―…って……」
「橋本課長に言われた通り、一緒にあたたまろ……?ね、大輝、いいでしょう……?」
「寧々ちゃん―…」
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