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目の前で涼しい顔で煙草をふかす、長身のうえに、彫刻のように整った顔立ち。
で、隙のない笑顔で笑う、自らの自信でみなぎる男。
それ以外、何の情報もなく、何の仕事をしてるのか、どこに住んでいるのか、果ては何故いつもここにいるのか、それさえも知らない。
身なりはきちんとしているが。
もちろん、名前も知らなかった。
昨晩ベッドの上で無理矢理名前を言わされるまでは。
私は昨日、この男に抱かれた。
普段はクールに見えるのに、ベッドの中では、とんでもなく熱くて。
熱くて。
何度も乱された。
フラッシュバックして、思わず頬を赤らめた佳梛を、目敏く奴は見つける。
「もしかして昨日のこと、思い出した?
そんなによかったんだ?」
まるで他人事のように、しれっと言う男が憎い。
「だっ誰が…!」
「そう?
俺はとんでもなくよかったけどね、もう一生忘れられないくらい。」
にやりと笑って、あっさりと告白する男に、佳梛の顔は益々赤らんでゆく。
「もういっそ、付き合おうか?」
この得体の知れない男と…!?
いやないないない。
子供じゃないんだから、一度寝たぐらいでどうこうなんて考えられるわけない。
なんて佳梛が真面目に考えていると、目の前の男が、突然クッと笑い出す。
「?」
「本気にした?
冗談だ。
君がどんなふうな顔をするのか、興味があったただけ。」
( ̄ヘ ̄メ)
ムカつく
「ああ、今度は怒った?
怒った顔もイイね。」
そんな綺麗な笑顔で微笑まれても。
やっぱりムカつく。
「私、もう戻ります!」
勢いよく立ち上がる。
「あ、そう?」
なんの未練も示されず、あっさりバイバイされる。
やっぱりからかわれただけか…。
でもその後が悪かった。
「また明日ね、佳梛。」
「…」
名前で呼ばれた。
また火照り出す顔。
鼻息も荒く、文句を言おうとしたけど、やめた。
奴が笑いを堪えてるのが、分かったから。
憤然と、踵を返し、そこから離れる。
持ち場に戻るために。
途端、彼は弾かれたように笑い出す。
くっそー
完全におもちゃ扱いだ。
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