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翌日の休憩時間、佳梛は誰もそこにいないのを確認してから、ベンチに座った。
なのに、お弁当を広げたところで、頭上から声が降ってくる。
「遅かったな。」
にっこりと胡散臭い笑みをたたえて、背後の非常階段からゆっくり降りてくるのは、昨日のムカつく男で。
げっ。
誰も居ないことを確認したけど、頭上まではしてなかった。
だってまず誰も、この裏庭のほうの非常階段になんか来ないから。
「逃げ損なったって顔だな、まあ、諦めろ。
相手が悪かったんだ。」
「…。」
佳梛の考えなんてお見通しって事か。
男は佳梛の近くのベンチに腰掛け、コンビニの袋から、デザートを取り出し、佳梛の前に差し出す。
「…?」
季節のフルーツと生クリームがのったプリン!!
美味しそう!!
じゃなくて。
何?
「やる。」
ひゃあ~。
大好物のデザート!
でも…。
佳梛が躊躇っていると、
「俺は甘いものは好きじゃない。」
なら何故甘いものを買ってくるかな。
って喉まで出そうになった言葉を飲み込む。
「…ありがとう。」
簡単に懐柔されてしまった感は否めないけど。
目下、年中節約中のこの身としては、仕方がない。
きっと…。
男も袋から、おにぎりを取りだし、包みを破り始める。
コンビニのお昼ご飯…?
なんだかとっても似合わない。
思わず見てしまっていると、ばりばりと無理矢理いびつに包みを開けたかと思うと、海苔を巻かずにそのまま食べ始めた。
えーっ(/ロ゜)/
もしかして食べ方、知らない?
「あの…、海苔…、
巻かないの?」
思わず声をかけてしまう。
「なんだ、これ、海苔を巻くものなのか?」
「…。」
「どうするんだ?」
やっぱり知らないんだ。
仕方なく、目の前に差し出された包みから海苔を取りだし、おにぎりに巻く。
「へぇ~、上手いもんだな。」
「…💧」
おにぎりの食べ方も知らないなんて、今時どこの世界のお坊っちゃんだっていうのよ。
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