寂れた裏庭

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病院で、スーツを着てる男性は事務職の人間だけど、院内では見たことないから、恐らく、医局や薬局に出入りの新しい業者だろうと思う。 けど、この不遜な態度に世間知らずのボンボンじゃ、大した仕事は出来ないだろうな。 ただ、この高身長に整った顔を武器にしてるなら、話は別だろうけど。 と、そこで、我に返った。 佳梛には、男が何者かなんて、どうでもいい。 さっさとお弁当を平らげ、もらったプリンにかぶりつく。 美味しーい! 久しぶりの癒し💕 夢中で食べ終えて、顔をあげると、男がじっとこっちを見ていた。 視線が絡みそうになるのを慌ててそらす。 男が小さくため息をつく。 「ずっとそういう顔してれば、可愛いのにな。」 余計なお世話だ! 仏頂面で、すみませんねっ。 可愛いのがお望みなら、こんなところに来てないで、院内に居ればいいのに💨 「何だ、不満そうだな。」 「…別に。」 「言え。」 何で、上から命令されなきゃなんないかな。 気に入らないと思いながらも、口を開いてしまう。 「じゃあ、何でここに来たのよ?」 「お前の仏頂面が面白くて、つい、な。」 人に無理矢理言わせておいて、答えが、「つい。」だと!? 馬鹿にしてんのか? この男は! 「念のため、言っておくが、馬鹿にしてる訳じゃないぞ。」 なんで、考えている事が分かるかな。 「お前の面白い顔を見に、また明日も来よう。」 ええっ。 逃げられるわけないとでもいった不敵な笑みを浮かべて、奴が言う。 佳梛が病院で、一人になれる場所はここしかないのに。 「だから、お前もその顔、見せにちゃんと来い。 逃げるなよ。」 うげっ。
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