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良い葬儀だった、などと言えば不謹慎に思われるかもしれない。
けれどじいちゃんがどんな人生を駆け抜けてきたのか。どんな人と関わり、何を残してきたのか。人伝にでも知ることができたのは僕にとって大きなプラスだった。
じいちゃんが書いた紀行文を読んでみたいと思ったが、今回の帰省ではそんな時間の余裕はなかった。
ネットで検索しても当然のことながら何一つヒットしない。
今度実家に帰ったら探し出してゆっくりと読んでみようと思う。きっと僕にとって宝物になる。
『月の砂漠をはるばると 旅の駱駝が往きました』
幼いころにじいちゃんが子守唄代わりに歌ってくれた。今になって思えば、旅好きのじいちゃんにぴったりの歌だ。じいちゃんも気に入っていただろう。
この歌には二匹の駱駝が登場する。
三番の歌詞には二匹の駱駝に乗った王子様とお姫様が出てくるのだ。
王子様とお姫様は、きっとじいちゃんとばあちゃんだろう。
これからはまた二人の旅が始まる。月夜に照らされた何もない砂漠でも、二人なら力を合わせて乗り越えていけることだろう。
けれどどうせなら優しい人たちに囲まれて、美しく咲き誇る花を愛でながら、大好きな日本酒を毎日飲める、幸せな旅であってほしいと心から願う。
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