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神間閻帳(しんまえんちょう)
この帳簿は、神と地獄の裁判長 閻魔大王との間でのみ知られるもの。
表には決して出されてはいない。良くも悪くもない魂の名前が書かれる不思議な本。
5000年以上も前に両者が互いの存在を認めた証に取り交わされたものだ。
神の座、閻魔大王の座に着くものの間でしか知られていない。神、閻魔大王ともに人の生死を扱うもの同士。いわゆる天国に行くか地獄に行くか判断する者。しかし、時には両者ともつかない魂もある。そんな魂がこの帳簿に書かれるのだ。そして、今日も一つの魂が閻魔大王の元に届いた。
「ん????」
目の前の特大の机に置かれた手元の大きな帳簿を眺めながら大柄な人はまゆをひそめた。それを見ていた小さな鬼が問いかける。
「閻魔様?」
「いや、なんでもない。右の部屋に入れておけ」
「へい!こっちだ!」
「えっ?なんで……なんで?」
青白い魂はふらふらと逃げようとする。
小さな鬼はそれを追いかけて捕まえ、じっと眺めてから答えた。
「お前は死んだんだ。どんなバツが待っているのかなぁ?」
「ええ!!」
小さな鬼の嬉しそうな顔を見た魂は思わず叫んだ。その叫び声は絢爛豪華な大きな館にこだます。
机に向かっている人は、魂の叫び声を右手に聞きながら次の魂と机にある帳簿を交互に見ながら確認していた。
地獄時間、午前0時。
遠くでボーンボーンと、低く重い鐘の音が鳴る。周りには本棚があるだけの殺風景な部屋の真中にポカンと一つ青白い塊が浮いている
「お、俺が……死んだ?」
その問いかけは誰が聞くわけでもなく部屋に静かに響いた。ふわふわと上下している魂は心なしかあたりをキョロキョロ観察しているようにも見える。
しばらくすると魂の目の前に大きくそびえる鉄扉の外から2つの足音と声が聞こえる。
「やはり届いていましたか」
「ああ。白とも黒ともつかん。第一、閻魔帳に名前が書き込まれなかった魂だからな」
「今の世の中では……そういう魂もあるでしょう」
バタン!
声と同時に部屋の重そうな扉が内側に開いた。
「これが、そうですか?」
「ああ」
入ってきたのは人と先ほどの大柄な人。
20代半ばといった感じの男とも女とも分からない人。体の線が細いのになぜかその人は大きく輝いて見える。そして先ほど机に座っていた人。年齢はわからないがこちらは体格がよく迫力満点。しかし怖い感じが全くない。
「あ、あの!」
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