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「へっ?誰が?」
「お前だよ」
「おれ?」
身に覚えのない言葉にしばらく考え込んだたけし。
ふっと青深が見ている革張りの本が気になった。
「その本、なに?」
「これか、これは死んだのに天国か地獄、どちらにも行けない訳あり魂の名前が書かれるんだ」
「訳ありの魂……」
「そうだよ。お前はどんなわけありなのか、蓮水と共に確認しに来たんだ」
「なるほど、それでその本に俺が自殺したと書いてあるわけだ」
「そうだ」
深く頷いた青深は再びその本に目を落とした。
たけしにはわからない文字がずらりと並んでいる。
「そうか……ん?俺が飛び込み自殺?まさか!だって俺歩いていただけだし」
「歩いていただけ?」
「ああ」
「うん?」
蓮水も青深も首を傾げるばかり。記載されている内容とたけしが言う内容がどうやら違うようだ。しかし、たけしは本当のことを言っているだけだった。
普通に歩いていただけだった。そして、気がついたらこの2人の前にいただけ。
蓮水はたけしに聞いた。たけしはその日に自分が行くはずだった所を答えた。
「それで?どこに行こうとしていたんですか?」
「大学」
「なるほど。それでは、少し調べてみましょう」
そういうと蓮水は一つ大きく息を吐き目を閉じた。静かな時間が流れる。まるで時間が止まったかのような静寂。青深はじっと蓮水を眺めていた。
そのときだった。
「あっ!真由美、和美、凛子」
たけしは自分の居場所を探すかのようにあたりをきょろきょろと見渡しそして見下ろすと3人の黒い服を着て歩く女性の姿を見つけたのだ。たけしは、思わず3人の元へと降りていった。
「おい!」
青深は慌てて後を追った。たけしはなりふり構わずスピードを上げて降下していく。そして3人の女性に呼びかけた。
「真由美。和美。凛子。どこに行くんだ?」
「あの、バカ!」
「車に飛び込むなんて何考えてんだか!」
「たけし……自殺なんて、なぜ?」
「えっ?自殺?」
3人が交わす会話にたけしはおろおろするばかり。そこへたけしの後を追ってきた青深がいった。
「お前の葬式に行くんだよ」
「ええ!!」
「さっき、言わなかったか?死んだんだって!」
「俺……」
いまだに状況判断が出来ていないたけしはフワフワと力なく辺りを漂い始めた。
「青深……」
「なんだよ」
「ちょっと状況が違うかもしれません。たけしは死んではいけなかった人間かも知れません」
「けど、自殺したんだろ?」
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