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「捜査上はそうなっているみたいですがまだ終わっていません」
「はぁ?ちゃんと捜査をして自殺と判断したんだろ?」
蓮水と青深はボーっと目の前の3人を見ている事しかできないたけしをよそに話をしていた。3人の女性は目に涙を浮かべながらたけしをすり抜けていく。
「たけし……」
「……真由美」
「……」
ただ呆然とその場にふわふわと浮くことしか出来ないたけし。
そしてポツリと。
「死んだ……」
「たけし、決断するのは早いかもしれません。ちょっとカマをかけてみます」
「おいおい!」
たけしのつぶやきに蓮水は少し楽しそうに答えた。これから起こる楽しいことを期待しているのかのように。それを青深は呆れた様子で見ていた。止める風でもなくただ見ていただけだ。
「おい!奥井!目撃証言はまだないのか!!」
「はい。早瀬さん!なんせ、人通りの少ない路地ですから・・・」
「これじゃ仏が浮かばれねえよ。自殺なのか事故なのか分からないなんてよ」
年配の刑事と若い刑事が話をしていた。たけしはその光景を眺めていた。たけし達3人がいるのは警視庁捜査一課の窓の外だった。
「蓮水。説明しろ!」
「そうですね。先ほどあの早瀬という刑事に自殺じゃないのではないかという疑いを持たせました」
蓮水の行動にやっと青深は説明を促した。蓮水は刑事たちの動きに目を配りながら説明をしはじめた。
「ほう……どういうことだ」
「青深、たけしは不慮の事故の可能性があります」
「うん?」
「知らないうちに死んでいた。ということですよ」
「死んだ理由なんて覚えていないのが当たり前だ。天界にくる途中で忘れてしまうのだからな」
「ですが、閻魔帳が忘れることはありませんよね?」
「もちろんだ。閻魔帳が判断できない死がこの本に記載されるんだからな」
たけしは2人の会話を静かに聞いていた。聞いているように見えるだけかもしれない。たけし自身がなぜここにいるのかがわからないのだから。
「それですよ。判断できないということは……」
「死んでいいのか死んではいけない人間なのかで迷った」
「そうです」
「で?一両日に真相を探すってか?」
「ええ」
「そんなに簡単なのか?」
「このケースは、この刑事さんには簡単なはずです」
「・・・・」
たけしは今だ自分の目の前で起こっていることを見ている事しか出来なかった。
蓮水と青深もその様子を静かに見守った。
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