第1章

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どれくらい時間がたっただろう……蓮水がにっこりと微笑んだ。 「ほら、もう気付いたかもしれません」 「その様だ」 「どういうこと?」 「見ていれば分かりますよ」 青深も蓮水に同調するように頷いた。ボーっと状況を見ていたたけしもその言葉に促されるように蓮水の顔を見て聞いた。蓮水はたけしに微笑むと窓の中をさした。 「奥井!目撃証言の中に子供の証言があったな?」 「はい」 「その証言を見せてくれ」 「早瀬さん?」 「いいから、持って来い」 「あ、はい!」 奥井刑事と言われた若い刑事は、年配の早瀬刑事に言われたとおり、資料の中から1枚の紙を取り出した。それを、何度も何度も読み返し早瀬刑事は言った。 「これだ!」 早瀬刑事はそそくさと捜査一課を後にした。 「追いましょう」 蓮水はそういうと早瀬刑事の後を追った。 刑事が向かった先はトラックの運送会社と目撃者の家それとたけしの家だった。 早瀬刑事がたけしの家に着くと同時に真由美と和美、凛子がやってきた。 「ちょっと、いいかい?」 「なんですか?」 一番しっかりしている女性が一歩前に出て早瀬刑事の話を聞いていた。 「たけし君が自殺する原因はあるか?」 「なくはないと思いますけど・・・」 「ないわ。だってたけし。明日、私達とデートの約束でしたから!」 「私達?」 「そう。2人には内緒で4人で遊ぼうって事になってたの。たけし、1人を選べないっていうし私も選んで欲しくなかったから。和と凛が悲しむ顔を見たくなかったし……でもそんなこと2人は信じないだろうから、内緒にして現地で会おうって。3人と付き合いたいっていうつもりだからって」 「なにそれ・・・」 「う、うん」 「和……凛……」 和美と凛子は戸惑った様子だった。 そして蓮水と青深も今の状況がつかめないでいるようだ。 ただ1人今の状況を分かっているたけしはバツが悪そうに体を小さくしていた。 そんな中でも早瀬刑事は冷静に3人に問いかけた。 「じゃあ、自殺する原因はないんだね」 「はい!絶対に!!」 「そうか、分かった」 そう一言言うと早瀬刑事はその場を後にした。 「……解決、しそうですね」 「うむ……そのようだな」 「……」 蓮水と青深は黙って体を小さくしているたけしを眺めた。 たけしは苦笑いを浮かべて2人を見ていた。 それから、早瀬刑事はトラックの運転手、足立(あだち)という男のところに足を運んだ。 「足立君だね?」
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