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「はい、何ですか?」
早瀬刑事は、警察手帳を静かに見せた。
「刑事の早瀬です」
「・・・・」
警察手帳を見せられた足立と言う男は目を大きく見開き言葉を失った。
その様子をたけしは興味深げに眺めていた。
「昨日トラックでどこを走ってた?」
「……配達コースですけど、それが何か?」
足立という男は少し戸惑った様子で早瀬刑事の問いかけに答えた。
早瀬刑事は間髪おかずに足立に聞いた。
「公園の前も通るよな」
「公園の前ですか?」
「そうだ」
「いえ。公園の前の狭い道は通りません」
「ほう・・・」
足立はすらっと否定をしたが早瀬刑事はちょっと考えた様子で彼の顔を見た。
「何か?」
早瀬刑事は、一つ大きくため息をつくと、静かに話し始めた。
「どうして君は公園の前の狭い道と言ったんだ?」
「えっ?」
「君のコースには、確かに狭い道があるが俺は公園の前も通るよなと質問したはずだが?公園と狭い道が一緒のところは一箇所しかないんだ」
「・・・」
早瀬刑事は足立の顔色を見ながらゆっくりと話を始めた。たけしと蓮水、青深は刑事の話に耳を傾けていた。
「昨日、沖公園の前の狭い道で若い命が奪われたんだ。知ってるな?新聞にも載っているからな。犯人はまだ捕まっていない。警察は必死に犯人探しをしているが事故のあったところは住宅街で、昼間は辺りの家は全て留守になる。人通りも少ないし有力な目撃情報もなかった」
「・・・・」
早瀬刑事は、今までの捜査状況を説明した。足立はうつむき加減で視線を道路に落とし淡々と聞いていた。
「犯人はそれを知ってたんだ。けど、その日は違った。たまたま公園で小さな男の子がおばあちゃんと遊んでたんだ」
「・・・・」
「俺たちはその男の子にも話を聞いた。確かに男の子は君のトラックを見ていたよ。何気ない言葉だ。トラックが通ってお兄ちゃんが轢かれたって。俺たちは先入観で物事を見ていた狭い道でも車は通る。有力な情報ではなかったはずだった。トラックと言っても数はあるしメーカーも多いからね」
「・・・・」
「しかし、驚いたよ。君の会社では、住宅街の中の狭い道は通らないそうだね。住宅街ほど危ないところはないしましてや公園の前なんて。と、社長さんは言ってたよ。いい会社じゃないか。けど、みんなそれを守っていない事もあるそうだから心配しおられたよ。案の定・・・」
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