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トンネル
大学のサークル仲間と遊びに行った帰り道、車中で怪談に花が咲き、たまたま近くにいたこともあって、出ると噂のトンネルへ行くことになった。
「そこの幽霊って、事故で死んだカップルだっけ?」
「違う違う。トンネル内で轢き逃げされた女」
「バイク事故のライダーが出るって話、そのトンネルじゃなかったっけ?」
「無視線の車だけ走ってるらしいぜ」
男四人で、色んな噂と冗談をごちゃ混ぜにしながら話す。それでも件のトンネルが近づいてくると、さすがに誰もが無言になった。
徐行とまではいかないけれど、何かあってもすぐ車を停められる程度のスピードでトンネル内を走る。
一定距離に設けられた蛍光灯の、弱い光が照らすだけの薄暗い坑内。
前にも後ろにも車はいないし、すれ違う対向車すらない。ましてやみんな所を歩いて通る者好きなんている筈もない。
元々トンネルなんて、どこも多少はおどろおどろしい雰囲気をしているものだが、時間も時間だし、とにかく他に車を見かけないから、
いっそう怖さが倍増する。
もしかしたら俺達は、知らない間にどこか異世界へ迷い込んでるんじゃないだろうか。
そんな錯覚を何度も覚えながら、それでも仲間が四人もいることを気持ちの地拠り所にし、俺達はただ先を目指した。
「あ」
あっけない程単純に出口に辿り着き、俺達はトンネルの外に出た。
暗くて周囲などほとんど見えないが、それでも、あの閉塞的な空間から出てくると安堵が湧く。
「結局何も出なかったな」
「噂なんて、こんなモンだよな」
強がりではあるが、トンネル内で怪奇現象に遭遇しなかったのは事実だ。
「じゃ、帰るとするか」
「でも一応、もう一回トンネル通ってみようぜ」
何事も起きないと、逆に、今度こそは何かあっても構わないというような心理になり、俺達は再びトンネルへ引き返した。けれどやはり怪奇現象など起こらない。
自分達以外、通る車もいないようなさびれきったトンネルだ。幽霊ですら、こんな所で出現の機会を窺っていても無駄だと思い、どこかへ行ってしまったんだろう。
最後にはそんな冗談で盛り上がりながら、俺達はいわくがついている筈のトンネルを後にした。
そして数日後。
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