トンネル

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 サークル内でこの日の話をしていた時、たまたま、このトンネル近所に親戚の家があるという奴から衝撃的な話を聞かされた。  俺達が肝試しノリで通ったトンネルは、昨年末に地震で崩落し、元々通行する者もほとんどいないという理由で、そのまま封鎖されたというのだ。 「今は、トンネル方面への道も完全封鎖されてて、徒歩でもそっちには行けなくなってるんだけど…お前らが通ったのって、ホントにあのトンネルだったのか?」  真顔でそう聞かれても返事ができない。  位置からして、俺達が通ったのは間違いなく、出ると噂のあったトンネルだ。でもそこはもう何か月も前に封鎖されている…?  そんな筈がないと反論しかけて、俺達四人は一斉に口を噤んだ。  今こうして話を聞き、思い返すと、少しばかり腑に落ちないことがある。  あの夜、トンネルに向かうまでは、前や後ろを走る車がいたのに、トンネルに入る時にはそれらが一台もいなかった。対向車も同様だ。  単純にあの時は、みんなはトンネルの噂を怖がって、別の道に逸れて行ったんだと思っていたが、もしかしたらそうてじゃなく、俺達だけが、皆とは違う道を走っていたんじゃないだろうか。  暗かったせいもあるけれど、トンネルの外の景色をまるで思い出せない。日が暮れてきた頃、田舎だから星がよく見えていいなんて言っていたのに、トンネルの外で星空を見た記憶すらない。  他の車が一台たりと通らないトンネル。風景もろくに見えなかったトンネルの向こう側。  俺達はどこを走っていた? いったいどこに辿り着いた?  そして何よりも、もしもあの時、もう一度トンネルを通って帰ろうとしなかったら、俺達はどうなっていた…?  まだまだ暑い時期だというのに、それを考えただけで背筋がぞっと冷え切った。  もう金輪際、怪談の噂がある場所に近寄るのはやめよう。 トンネル…完
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加