恋は砂糖菓子に似て

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<<日本時間20時、シンガポール時間19時>> シンガポール有数のリゾートホテル。その玄関口では、ボーイ達が慎重に荷物をタクシーに詰め込んでいく。 紙袋や外箱のロゴを見れば、その荷物の価値を推し量るのは簡単で。周囲の人々が一体誰の荷物だろうかと興味を惹きつけられていた。 ボーイが最後の一箱を詰め込むと、一人の長身の男性が現れた。 途端に周囲が、特に女性達がざわざわし始める。その男性は周囲の好奇の視線を完全に無視しながらボーイと何事か話すと、ホテルの方を振りかえる。 そして、柔らかな笑みを浮かべた。 その表情に、女性達がほうっと呆ける。 それから笑顔を向けられた女性に対して、嫉妬の様な視線を投げつけた。 だけどその女性は何やら慌てているらしく、周囲の様子などお構いなしに小走りでその男性に近付く。そしてそのまま・・・、タクシーに乗ってしまった。 タクシーが走り去った後、玄関にいた人々も散り散りに離れていく。 それでも彼らはタクシーに乗った二人について好き勝手に噂するのだけど・・・、そのことを先ほどの女性、美夏は知る由もなかった。 「す、卓さん。フライト時間大丈夫かな。」 「ああ。空港まで1時間もかからないから、大丈夫だよ。」 「ごめんなさい。私が時間を間違えて覚えていて、用意に手間取ってしまったせいで・・・。」 「いいよ。」 卓さんの左手が、私の頭を優しく撫でてくれる。 慣れ親しんだ感触が、若干パニックになった心を落ち着かせてくれた。 卓さんがペットボトルを手渡してくれる。冷たい水が、更に私を冷静にさせてくれた。 「ありがとうございます。」 「いいえ。所で、忘れ物はないかい?あったらホテルから送ってもらう様に手配するからね。」 「ええと・・・。」 頭の中で色々と考えて、そして首を横に振る。 「大丈夫。あ!」 「ん?」 「忘れ物じゃないんだけど。ずっと携帯見てなかったって思い出して。」 そう言いながら鞄の中から携帯を出す。 今日一日、卓さんとのデートが楽しすぎて、すっかり携帯チェックを失念していた。
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