220人が本棚に入れています
本棚に追加
「美夏、可愛い。」
「卓さん!」
出来る限りきつく睨みつけると、卓さんは苦笑する。
その後、もう一度私を抱きしめると、私の耳元で穏やかな声を出す。
「このまま二人っきりで過ごそうか?」
「え?でも、無理なんじゃ・・・。」
「何故?」
「だって、もう離陸だし。席に着かないと・・・。」
卓さんは私の体を少し離すと、私の目を覗き込む。
「一緒にいたくないかい?」
「いたいけど・・・。」
「では、答えは簡単だね。」
卓さんは私をベットの方に連れてくると、ベットの脇を指さす。
「?」
近付いてよく見てみると、それは・・・。
「え!ベルト!?」
思わず卓さんを仰ぎ見ると、卓さんがふっと笑う。
「飛行機だからね。」
「・・・っ。」
確かに、ここは飛行機の中。
フライト中はベルトしなければならないのは確かだけど・・・。
だけど、この豪華なベットにベルトが付いているという違和感に、何だか笑えきてしまった。
思わず笑ってしまった私に、卓さんも悪戯っぽい笑顔を向けてくる。
「早速、このベルト使ってみようか?」
「はい。」
卓さんは戸外にいた乗務員に何事か伝えると、ドアを内側からロックする。
引き寄せられるかの様に卓さんに体を寄せると、ふわりと体が浮いて、卓さんが私をベットに運んでくれる。
柔らかなベットに体が沈む感触に、心臓が再びドキドキと早鐘を打ち始めた。
息がかかる程の距離で、卓さんがやんわりとほほ笑む。
漆黒の目。
その奥底に灯る熱に気が付き、自然と頬が熱くなる。
甘い時間が始まる予感にそっと瞼を閉じると、瞼に柔らかな唇が触れた。
最初のコメントを投稿しよう!