「出会い」

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「彩姫さん、浩輔(コウスケ)お客さんの前だよ」 友哉さんが言うと、2人がピタリと止まった 「悪い………」 「つい、いつものクセで」 バツが悪そうに頭を掻く浩輔さんと、アハハと苦笑する彩姫さん 「ゴメンね?騒がしくて」 友哉さんが私の方を向いて謝った 「いえ…………あの、手当てとカフェラテありがとうございました。もう帰ります」 ペコリとお辞儀し、立ち上がった 人の気持ちが感じられる身としては、ここにいるのはツライ それに、さっきから色んな人の気持ちが流れてきて頭痛い 「もう帰っちゃうの?お姉ちゃん」 翔くんが制服の裾を掴んだ まだ帰らないで。という目で見上げられている 「コラ、翔。ワガママ言うな」 友哉さんが、翔くんに目線を合わせ言った 「ごめんね、無理やり連れてきちゃって……やっぱり迷惑だったよね?」 友哉さんが私を見上げ、苦笑した 「そんな事は………」 私は首を振った 驚いたけど迷惑な訳じゃなかった こんな風に、賑やかな空間にいるのは学校以外では久しぶりだし でも……賑やかであればある分、人が多い分、気持ちがたくさん感じ取れてしまう 自分の思ってる事を他人に、ましてや勝手に知られるなんて嫌だと思う だから早く帰って1人になりたい 「…………ってか、顔」 浩輔さんがいきなり私を指差した 「顔?」 彩姫さんが首を傾げた 「お前、顔見えねぇ。前髪も長いし、ここに来てからずっと俯き加減だし。親に教わんなかったか?人と話する時は目を見ろって」 不愉快そうな声で言われた 確かに言ってることは正しい 正しいけど、それが出来たら苦労しない 「…………………すみません」 私は謝りつつも、顔は上げなかった 「謝るなら顔上げろよ!」 イライラした様に言われた 【確かにそうよねぇ】 【今どきの子は、人の目を見て話すことさえ出来ないのかしら?】 【こんな躾をした親の顔が見たいわ】 頭の中に私に対する気持ちが流れ込んできた うるさい!うるさい!流れてくるな! 私は頭を押さえ、小さく振った 「お姉ちゃんどうしたの?」 「頭……痛いの?」 翔くんと友哉さんが心配そうに顔をのぞき込んできた 「……大丈夫、です」 頭を押さえながらそう言った
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