極東メランコリー

3/5
前へ
/66ページ
次へ
 重い金属でできた錬金装置に群がる知恵者たち。目的はいつしか利権という目先の現実に取って代わられ、思想をどこかへ置き去りにしてきた政治屋たちが、そのための根回しに奔走する。  図体がでかいことと一流を履き違えた時代錯誤(アナクロ)どもが、噴飯ものの物言いでおれたちを丸めこもうとする。ぶ厚い面の皮の下に見え隠れする捻じ曲がった矜持。陋劣なる愚蠢の人物は野卑な光を湛えたその目で真っ当めいた虚言(そらごと)を朗らかに説く。  自分の正義に従い声を挙げてきた連中も、そいつを忘れ飛ばすのに見合うだけの金を積まれ、洒落にならない代物の存在に、ついにはシカトを決めこんだ。 ──愚かなるこの国の人心に問う。答えろ。  どこかで誰かが人を殺す。捕らわれる。司法がそいつを裁く。無関係なやつらまでもがそいつを叩く。そいつの人生が終わる。興が醒める。次の慰み者を探す──そうだろ?  じゃあこいつはどうだ。どこかでなにかが爆発する。辺りかまわずぶちまけられる死の灰。誰が悪い? 誰を裁けばいい? 誰を慰み者にする? あいつか? それともおまえか? 答えろ、極東の猿ども。  この国は初っ端からとち狂っている。今さらなにをどうしたところで、はじまるもんでもない。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加