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「おい、メグミ。約束を果たしてもらいに来たぞ。」
偉そうに腕を前に組み、自信ありげに微笑む女がそう言った。背は低いが、馬鹿にできる雰囲気ではない。
ここは能力をもたない人間街のバー。
能力者でもマスターの証として首に右側の翼がついている為、嫌でも周りはざわついた。
マスターはこうして人間の街にはまず現われることはない。
「覚えてないな。」
ふぃと顔を背けたが、はなから意見を聞く気もないのか女はテーブルに肘をつき、顔を覗き込んだ。
「お前を見つけるのには苦労した。苗字を変え、生まれた土地を離れ、表舞台から姿を消したのだから。」
「探してくれとは頼んだ覚えはない。」
「そうだな。だが、私は約束を覚えている。そして、お前を見つけた事を瑞樹に知らせると、とても会いたがっててな。今、外に来てる。」
「・・・・お目付役のケンが良く許したな。」
「ケンは抜きだ。黙ってきた。」
随分と性格が悪くなったものだ。
メグミは舌打ちしつつ、まだ半分以上残った酒を下げるよう手を振り、お金をテーブルに置いた。
「メグミは昔から瑞樹には弱いからな。」
「ナーシャはいないだろうな。」
「あいつはうるさいからな。」
それを聞いて少しはホッとした。
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