事情聴取

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 私は駅前のとあるカフェで、小西清次郎さんと向き合っていた。  小西清次郎さん。こうして一緒にいるけど、彼の事は良く知らない。  最初に会ったのは、音無さんに【Twilight】で声をかけられた時、一緒にいたのが彼だった。  その時は全く話さなかったので、正直、存在そのものも曖昧だった。  その次に会った時は、例のストーカー事件の相談に乗ってもらった時で、初めて彼のフルネームを知ったし、職業が刑事だって知らされた。  直接話したのも、この時が初めてだったと思う。  小西さんは、謎の多い人だ。  音無さんとは高校からの付き合いだそうで、音無さんくらいしか、友人らしい友人がいないとか。  穏やかな音無さんとは対照的に、無表情で、人を寄せ付けない雰囲気がある。  でも流石大人というべきか、出るところに出れば、きちんと話もできるし、笑ったりもしている。明子なんて「二重人格よ、アレ」とか言う。  なんでも、最初【Twilight】で会った時は、遊び人風だったとか……。(ごめんなさい。覚えてない…)  後から聞いた話によると、私達が最初に【Twilight】で会った時の姿は張り込み中で『Barに来ている客』を装っていて、音無さんは小西さんに付き合って飲みに来ていたのだとか。  それには驚いた。そんな時(仕事中!?)に知り合ってしまっただなんて。 「あいつ地だと、ホント、愛想ないからなぁ」って笑う音無さんは、小西さんの色々な顔を知っているのだろうけど……、私は少し怖い印象がある。  とはいえ明子の事件の時、親身になってアドバイスをくれたり。  きっと悪い人じゃない。表情筋が硬いだけ、とか……  くどくどと小西さんについて思いを巡らせながら、当人と向かい合っているわけなんだけど……、何を話したらいいのか、思いつかない。  そもそも、なぜ私がこうして彼と向き合っているか、というと……。  今日、私たちは明子の招待で『前川いちご』というBL作家のお宅にお邪魔した。  小西さんのアドバイスで明子のストーカーを監視した私は、自然と明子の行動まで把握することになり、明子がとあるマンションに頻繁に出入りしていることが分かった。  いつだったか、そのマンションから明子と共に白人男性が出てきたことがあった。  二人がなんとなく人目を避けているように見えたし、明子がスーパーの買い物袋を下げて、呼び鈴なしで入っていく姿も見かけたりして……。勝手に『訳ありの恋人』認定してしまった。  けれど、それらは全て誤解だったらしい。明子は大慌てで『誤解を晴らしたいから』と言って、私たちを前川先生に会わせてくれた。  正直、前川先生のキャラの濃さには驚いたけど、明子に実害はないみたいだし、安心した。
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