小西清次郎の告白

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 その電話を受けたのは、パスポートセンターの帰り道。  出来立てほやほやのパスポートを手に、うきうきしながら家に帰る途中だった。 「もしもし、光ちゃん? わたし、わたし」 「えっと……。オレオレならぬワタシワタシ詐欺?」 「面白いこと言うのね……。  あのね、私忙しいの。光ちゃん、私の家わかるでしょ?  今すぐ来て! 待ってるわ! あ! 手土産は結構よ!」 「え!? もしかして、前川先生ですか?」 「他に誰がいるのよ!? じゃー、待ってるからね~」  私が返事を返す前に、当然のように通話が途切れた。  私の携帯番号……。どうやって知ったんだろう? 。。。  前川先生のマンションには一度お邪魔しているし、そうじゃなくてもヨシキリョウを監視していた件で、何度も行っていた。  だから行き慣れた道のごとく、なんの迷いも無く到着することができた。    エントランスで部屋番号を押すと、すぐに先生の軽快な声が聞こえ、自動ドアが開く。 そして部屋の前まで来てチャイムを押すと、玄関の扉を開けたのは……、小西さんだった。 「あ……」  なんの心構えもできていなかった私は、小西さんから「宝田さん? どうぞ、入って」と声をかけられるまで、マネキンのように、ただ固まっていた。  奥のリビングに通されると、先生はゆったりとソファに座っていて 「よく来てくれたわ~。さっ、私の隣に座って?」  笑顔を向けて手招きしている。  私は、はぁ……、とあいまいな返事をして先生の隣に座った。  自分がどうしてここに呼ばれたのか、全く想像できない……。  しかも、なぜか小西さんの手によって、目の前にコーヒーが置かれる。  軽い会釈と一緒にお礼を言うと、彼はソファの向かい側に座った。
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