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咲「アクセルさんっ!」
ようやくたどり着いたレオンの身体に触れ、その身体が冷たくなり始めている事に気づく。
咲「そんな…」
焦りながらも、大丈夫だと自分に言い聞かせ、レオンの脈を確認する。
―――トクンッ…トクンッ…。
それは弱々しく、まさに灯火のような状態だった。
咲「ルンさんっ…誰か…!」
レオンが危険な状態だと、状況は嫌にでも理解させてきて
住民が避難して人気のないその場で、咲は誰にでもなく声を上げる。
ザッ…
咲「!」
そんな声に反応してなのか、タイミングがよかったのか、その場に駆けつけた影が1つ
咲はそちらへ振り向く。
咲「小森ニ士…」
そこには、レオンに言われて住民を避難させていた小森が立っていた。
小森「わ、わた、私が、応急処置くらいなら…!!」
明らかに緊張したまま、小森はレオンへ駆け寄り
咲「回復魔法が使えるんですか…?」
小森「えっと、あの、本当に些細なものですけど…でも、これがあるので…!」
そう言って小森が手に持っていた小瓶を咲に見せる
咲「それは…ポーション…!」
小森が持っていたその小瓶の中身は、自然治癒力を数分間だけ飛躍的に上昇させる治癒のポーションであり
小森「ぶ、部隊の隊員は各自一本ずつ持ってるんです…、緊急用にって…!」
小森はその小瓶の蓋を外すと、それをレオンの口に流し込み
ポウッ……
それこそ灯火のような、僅かな治癒魔法により、レオンの腹の穴から流れる血を止血しようと試みた。
小森「死なないで…! 死なないでアクセル一士…!」
咲はそんな小森の治療を隣で見守る事しかできず、しかし、彼女が無意識に握るレオンの手は、僅かに、だが確かに温もりも取り戻しつつあった。
ピクッ…
咲「! いま、僅かに手が…!」
小森の必死の治療により、自分が握る手に反応があったことを知らせる咲
と、そんな時だった。
「うがァァァァァっっっ!!!」
ドォォォンンンッッ!!!!
咲「!?」
小森「えっ!? えっ!?」
先程バラシィが突っ込んで倒壊した民家の瓦礫が吹き飛び、そこに立上がる影がうっすらと浮かび上がったのだ。
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