Ep:3‐奪われたもの

21/23
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/580ページ
咲「アクセルさんっ!」 ようやくたどり着いたレオンの身体に触れ、その身体が冷たくなり始めている事に気づく。 咲「そんな…」 焦りながらも、大丈夫だと自分に言い聞かせ、レオンの脈を確認する。 ―――トクンッ…トクンッ…。 それは弱々しく、まさに灯火のような状態だった。 咲「ルンさんっ…誰か…!」 レオンが危険な状態だと、状況は嫌にでも理解させてきて 住民が避難して人気のないその場で、咲は誰にでもなく声を上げる。 ザッ… 咲「!」 そんな声に反応してなのか、タイミングがよかったのか、その場に駆けつけた影が1つ 咲はそちらへ振り向く。 咲「小森ニ士…」 そこには、レオンに言われて住民を避難させていた小森が立っていた。 小森「わ、わた、私が、応急処置くらいなら…!!」 明らかに緊張したまま、小森はレオンへ駆け寄り 咲「回復魔法が使えるんですか…?」 小森「えっと、あの、本当に些細なものですけど…でも、これがあるので…!」 そう言って小森が手に持っていた小瓶を咲に見せる 咲「それは…ポーション…!」 小森が持っていたその小瓶の中身は、自然治癒力を数分間だけ飛躍的に上昇させる治癒のポーションであり 小森「ぶ、部隊の隊員は各自一本ずつ持ってるんです…、緊急用にって…!」 小森はその小瓶の蓋を外すと、それをレオンの口に流し込み ポウッ…… それこそ灯火のような、僅かな治癒魔法により、レオンの腹の穴から流れる血を止血しようと試みた。 小森「死なないで…! 死なないでアクセル一士…!」 咲はそんな小森の治療を隣で見守る事しかできず、しかし、彼女が無意識に握るレオンの手は、僅かに、だが確かに温もりも取り戻しつつあった。 ピクッ… 咲「! いま、僅かに手が…!」 小森の必死の治療により、自分が握る手に反応があったことを知らせる咲 と、そんな時だった。 「うがァァァァァっっっ!!!」 ドォォォンンンッッ!!!! 咲「!?」 小森「えっ!? えっ!?」 先程バラシィが突っ込んで倒壊した民家の瓦礫が吹き飛び、そこに立上がる影がうっすらと浮かび上がったのだ。
/580ページ

最初のコメントを投稿しよう!