Ep:4−可能性

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キュアッ――― 咲「やめっ――!!」 ドンッッ!!! シュウゥゥゥ……… バラシィ「あん?」 レオンに向けられていたバンパイアの左手のひらから、赤い光が放たれたる寸前 その左手はどこからか放たれた魔力の矢に射抜かれ、手のひらに収束していた光は散開して消えた。 バンパイア「……」 不機嫌さを隠そうともせず、バンパイアは矢が飛んできた方角を睨みつける。 咲「あれは…!」 バンパイアの見つめる先には、民家の屋根で弓を構えるメユの姿と、もう一人 「うぉぉっっ!!」 ブォッッ!! バンパイア「バカが」 ドガンンッッ!!!! 大剣である魔剣ティルヴィングを振りかぶり駆けてきた将は、バンパイアに向けティルヴィングを振り下ろし、バンパイアは槍の柄でその刃を受け止める。 ギリギリッ…!! 将「んだとッ…?」 バンパイア「…なんだと」 互いに引かないその力強さに驚いていたが メユ「一斉風凛ッ!!」 次いで屋根の上から放たれたその強烈な風の矢を確認したバンパイアは、自ら将と距離を取り、後退し ドンッッ!! 標的を失った風の矢は地面をエグった後に消え去った。 バラシィ「ちぃ…仕留めそこなってたカ…。 やっぱり兵器なんざアテにはならないネ」 ギンッ!! ダンッ! 背後から現れた将とメユを確認し、バラシィは咲の真剣を弾くと、自身もバンパイアの横へと後退した。 ズザッ! そんなバラシィの行動に、咲もまた将の隣に並び立つ事で向き合う。 咲「…身体は大丈夫なんですか?」 将「あぁ…おかげさまで、水死する前に回復したよ」 よっぽど荒治療だったのだろう、想像は容易かったが、そこにはあえて触れず 咲は後方のメユに少し近づいてくるように合図を送ると 咲「…端的に説明します。 まずあの小森ニ士ですが、中身は別人です」 将「なにっ?」 メユが自分たちの後ろについた事を確認した後、そう話し始めた。 咲「あの2人が持つのはビリーブ・ウェポン。 以前私たちαチームとあなたたちΔチームで突き止めたシビリー・アポウドの破棄した研究所から見つけた資料の…実物の魔具です」 将「あれが…!? あの時の一本だけじゃなかったのかよ…」 咲「そして、魔物の核を入れ込まれたその魔具により2人は魔物化しています。 女のほうは"半分"ですが、小森ニ士は魔具の中の魔物の意思に意識を乗っ取られています」 メユ「そんな…小森さんが…!?」 咲「更によくない情報ですが、小森ニ士の身体を奪ったアレは、バンパイアです」 将「マジかよ…化物じゃねぇか…」 さすがにその情報には、魔物に詳しくない将でもたじろぐ様子を見せ 咲「その上、これは確定ではありませんが…、おそらく、アークシード教導官を襲ったのもあのバンパイアです」 将「はぁ!?」 メユ「えっ!?」 まさかの解答に、2人は声を上げて驚く。 咲「根拠として、私とアクセルさんは現場を確認して、教導官と敵との争いの痕跡を確認しました、そして、それが"槍のような長物"でつけた傷であると結論づけました。 しかし、その荒い痕跡から、それをつけたのが素人だ…とも」 バラシィ「ハッ、素人だってさ、言われてるヨあんた」 クククッと、可笑しそうに笑いながら距離を空けて横ばいに立つバンパイアへと語りかけるバラシィ バンパイア「黙レ…俺様はもともと武器など使わんのだ、本来なラなによりも強靭な我が肉体があったのダカらな」 バラシィにコケにされ、バンパイアは苛ついた様子でそう言い返す。 咲「そして、最大の根拠が、相手が小森さんの姿であった事…です」 メユ「…そっか! リーナ教導官が敗けたのは…!」 将「味方であった小森さんが相手だったから…か」 バラシィ「ぷっ…あはははっ!」 と、ここまでの咲の推測を聞き、バラシィは高らかに笑い バラシィ「そこまでバレてるなら、もう隠す必要はないネ!」 その推測が事実であったことを認める発言をした。 バラシィ「ソう…あんたの言うとおりだよ。 見せてあげたかったねぇ、あの女の驚くカオ…。 意味もないのに必死に呼びかける様をサァ!」 将「テメェっ…!」 バラシィ「おいおい、怒るならお門違いだロォ? 手を下したのはコイツだシ、そもそもあの女は自分から倒れたってのにサァ」 咲「…自分から?」 バラシィ「そうサ、"あの男"が選ばせてたんだヨ、この器を救いたいなら、自分たちに協力しろってネ」 咲「あの男…」 将「なんの話だ!!」 バラシィ「だーかーらー」 「喋りすぎだ」 将「!?」 メユ「な、なにっ!?」 言葉を続けようとするバラシィの声を遮るように、その声はあたりに響き渡り ピシッ… 突如、バラシィとバンパイアの間の空間が裂け そこから、一人の青年が現れた。 ウェーブのかかった金髪と同色の瞳。 戦闘用に改造されたツナギ形状のタイツの上に、ショートジャケットを身に付けるその青年は 咲「――アーク…スタジオン……!!」 以前、高山の街にて亮と戦い敗れ、行方知れずになっていたfolie humanoidのアーク・スタジオンだった。
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