第1章

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「もうあんた帰んな。よく頑張ったよ」  友人が私に言った。 「後は、私がなんとか言っとくからさ。傘は……持ってるじゃん」 「ごめん。先帰るね」  それを最後に私は結婚式場を後にした。  小雨のなか差す傘は、懐かしい香りがした。  私は、七年近く寄り添ったこの傘を強く強く両手で握った。 「また、返せなかったよ」
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