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「だって、アッピーはアッピーだから!挽き肉を挽き肉と呼ぶようにアッピーはアッピーだから!」
もういいよと言いながら、俺が深い溜め息をついたのが気に障ったらしい。紅林がムッとした顔で俺を睨んだ。
「そんなに言うならアッピー!アッピーも小説の冒頭を考えてみなよ!考えてみればアッピーにもその難しさが解る筈さ!」
え?そっち?
その瞬間、自分でも相当にキョトンとした顔に成ったのだろう事は分かった。それを紅林は更に取り違え、大丈夫!アッピーにだって出来るよ!とか言って騒いでる。
トントンと机の上に置かれたスマホを叩きながら紅林は俺に視線を向け、ニヤリと笑う。
「いいかいアッピー。スマホ小説の凄い所は、俺達のような高校生も、手練れの大人達も、誰もが平等!純粋に作品で勝負出来る所さ!」
ふむ。
「高校生なのに出版した奴だって居るんだぜ!夢だよな、夢ドリーム!」
『夢ドリーム』ってなんだよ?せめて『ドリー夢』にしろよと、心の中で苦笑していると、「だから作品の一行目は夢への入り口!さあ、考えよう!」と、紅林が1人興奮している。
「教室の戸を開けたら、そこには」さあ、この後に続く文章は?さあ、考えてアッピー!」
「ん?何?何でその文章から始まらないといけないの?」
俺が当然の疑問を口にすると、紅林はフフン!と鼻を鳴らした。
「だからぁ!俺は脳内プロットタイプだって言ったでしょ?そして脳内プロットで一番意識するのが冒頭とラストなんだよ!最高の冒頭でスタートしたら、後は感動のラストまで言の葉を走らせるだけ!今回の小説の冒頭はこの文章に決まってるから、それは動かせない!」
ふむ。良く解らない。けどまぁ、こだわる場所は人各々だからと理解しとくか。
そんな事を考えていると“ポン”と紅林が手を叩いた。
「『教室の戸を開けたら、そこにハンバーグ!』どうだいアッピー?はんぺんよりも話が広がりそうじゃね?誰がそこにハンバーグを置いたのか?目的は?ソースは?デミグラスソースか?それともフルーツソース?あ!そうか!1日目はデミグラスソースで、2日めにはワサビソースが掛けられていた!このソースには、隠された意味が有って、それを解かないとクラスメートが死んじゃうんだ!どうよ!怖くね?ミステリじゃね?」
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