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「アッピー!ア―――――ッピィ――――ッ!」
森羅万象の王様を造り出してから1年。
違うクラスになってはいたが、未だに仲の良い紅林が、休み時間に俺のクラスへ走り込んできた。
「アッピー!聞いてくれよ!パクられた!俺、パクられちまった!」
ゼェゼェと息を切らしている紅林。よっぽど走って来たのだろう。
「どうした紅林?警察にパクられたのか?」
とは言ったものの、はて?昨日も紅林は登校していた。そして、今はここに居る紅林は、一体いつパクられたのだろうか?
すると紅葉した紅林が「違うよ!警察にはパクられて無いよ!パクられたのは俺の魂さ!」と言ってきた。益々もって解らないので、解るように説明してくれと諭したら、幾分落ち着いた紅林が、コホン、と咳を1つ払ってから話始めた。
「いや、パクられたのは俺の魂と言うべき作品、小説さ!今度、俺の所属するサイトから又も書籍化される作品が有るんだけど、その設定が俺とアッピーで考えた設定に似てるんだ!つまり、今、俺の連載している作品に似てるんだ!」
紅林は興奮し、机をドンドンと叩いては痛てぇ痛てぇと手を擦る。
そして俺にグイと顔を近づけ
「俺の作品をパクった小説にはさ!俺の小説と同じ森羅万象の王が出てきて、宇宙が舞台で!違うのは俺の小説は地球人が他の星に行くけど、パクり作品は地球にやって来る事!バトルじゃ無くて恋愛カテな事!でも、森羅万象の王!旅する男二人組!似ている設定が沢山有るんだよ!
ちきしょう、パクったクリエも高校生で、既に1作書籍化してる奴なんだ!そんな奴が、俺の作品をパクるなんて許せない!」
ああ、やれやれ。仕方が無い。
俺はコホンと1つ、咳払いをして紅林に向き直る。
「なあ紅林。そのパクったらしい作品の名は『スペースインモラル』だろ?それ、俺の作品。だから、考えたのは紅林ってよりも俺だからさ。」
紅林が固まった。
俺は一言、紅林に告げる。
「ごめんね。」
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