第二章 お仕事しましょう

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「はい、お待たせ。野上くんのはこっち。セリはほら、コーヒー」 アイスかホットか聞かれなかったのを思い出したが、ちゃんとアイスで出てきた。さすが。 「ありがと~。あーいちにちのお終いのコーヒー…」 「セリさんて本当にコーヒー好きですよね」 「多分こいつの体液コーヒー成分濃厚になってるな」 二人がかりで畳み掛けるように馬鹿にされた。 「いいんだ別に、ぐーぐーがんもと呼んでくれても」 「ぐーぐ…、何ですか?」 野上を本気で戸惑わせてしまった。 「ごめん若者には通じなかった。あのマンガも古くなったもんだなぁ…」 「セリお前、アルコール一滴も摂取してないのによく酔えるな」 「空気で酔えるね、やっぱアルコールのある場所にいると」 「え?」 野上が頓狂な声を上げて、わたしを検めるように見た。 「セリさん、お酒飲んでないんですか?さっきまで飲んでたの、何だったんです?」 「あれはカクテルに見せたジュースだから」 友明はしれっと種明かしした。野上は仲間うちと認定されたわけね。まぁ実際そうだけど。 「この人アルコールほぼ壊滅的に駄目だから。こうやって接待の時は、何も言われなくても自動的にソフトドリンク出すようにしてるんだよ。一応ちゃんと、本物のカクテルと見比べてもわからないように作ってるけど」 「えぇーそうなんですか?俺だけ酔ってて、なんかズルいです」 またヘンなこと言い出した。 「何言ってんだお前。アルコール、嫌いだったんか」 「いやどっちかというと好きです」 じゃあ尚更何言ってんだ!経費で思う存分飲んだんだから、いいじゃないか。わけのわからんごね方するんじゃない。 「でも、最初の居酒屋では、ビールで乾杯してましたよね」 「一杯くらいで、食べながらちびちび飲む分にはまぁなんとかね。空きっ腹だとビール一杯でもきついよ。しかし昔、会社員だった頃はもっと飲めたんだけどなぁ。辞めて独立したら、急に全く受け付けなくなっちゃったんだよ。単に歳かね」 「セリさんは歳じゃないです。全然若いですよ」 フォローしようという意欲は買うが、君はわたしの実年齢を知ってて言ってるんか。 「て言うより、気が張ってたのがバッと抜けたんじゃないの。精神的なものだと思うよ。もともとアルコール適性がないのを気合いで補ってたんでしょ。必要なくなったから、本来の体質が表に出てきたんだよ、きっと」
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