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「ていうわけなんすけど、誰かいい人いないですかねぇ。学生さんのバイトでいいんですけど」
今でも仕事がらみで付き合いのある書店の店員さんに、雑談ついでの世間話でふってみたところ、彼は意外に真剣な面持ちでうーん、と首を傾げた。
「今どきは、うちなんかでも学生さんのバイトの確保はなかなか難しいからねぇ…。まぁ、書店は給料が断然安いってのもあるけど。セリさんとこは、仕事内容がちょっと面白いし、バイト募集サイトとかに広告出せば、結構集まるんじゃない?広告代もったいないか」
「広告代はまぁいいんですけど、うっかり数集まっちゃってもそれはそれで対応面倒で。ひとり採れば充分なんで、断る手間がかかるのも無駄ですしね。それよりは知り合いの伝手で、まともな人をひとり紹介してもらえたら一番いいなって、まぁ虫のいい考えなんですけど」
どっちにしろ雑談のつもりだったので、その辺で切り上げるつもりで言ったところ、彼は少し長めの沈黙のあと出し抜けに言ったのだった。
「…セリさんさぁ、バイトじゃなくて、フルタイム採る気ない?できたら正社員」
「ふぁ?」
結構びっくりしました。フルタイムの正社員?…贅沢品だ。
「正が難しければ、契約社員でもいいけど。結構仕事、忙しいんでしょ?それくらい任せられる量、あるんじゃないの」
「まぁそれは…、ちゃんと任せられるようなレベルの人なら」
人がいればいるなりの量の注文を受ければいいだけの話なので、それはできるとは思うんですが。でも、ある程度は自分で判断してこなしてくれるくらいの人材でないと正直困る。付きっきりで見てなきゃいけない仕事ぶりなら、フルタイムいられたらこっちも仕事にならないし、バイトと違ってそう簡単に辞めさせるわけにもいかない。
「それは大丈夫、ちゃんとひと通りこなせるやつだから」
「てことは、具体的に誰かを想定した話ですね?」
「うん、そう」
彼は(話の筋に関係ないのだが、名前は一条さんという)パイプ椅子にギシッと音を立てて腰掛け、わたしにも隣の椅子を指して座るように促した。ここは作業用のバックヤードなので、椅子と折り畳みの長机がある。今は他の人は誰もいない。
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