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「姉ちゃんのその顔、幽霊がいるって信じてないだろ!」
「あー…うん。私、見えないモノは信じないからー」
「そんなこと言ってると廃墟の幽霊に取りつかれちゃうよ!」
「取りつかれる?幽霊が出て怖いーって話じゃないの?」
「それは違います」
竜はそう言うと、眼鏡をくいっと上げて柚依と薫の間に立った。右手の人差し指をたてて「いいですか…」と続ける。
「廃墟に出る幽霊というのは、夏休みが明けたくらいから広まった噂です。なんでも、夏休みに肝試しで廃墟に行った中学生が、他の人には見えない人がいると言い出したことから始まりました」
「他の人に見えない人?」
「はい。正確には、中学生は複数人のグループで廃墟に行ったらしいんですが、その中で1人だけに見えたそうなんです。見えたのは子供の頃に亡くなった友達らしいんですけど…。その人は、友達がいると言うのですが、誰もその人だけが見える友達を認識することができませんでした。誰もいない空間に話続ける姿は周囲に気味悪がられ、本人も周囲との関係に悩むようになったそうです。次第にその人は話さなくなり、学校を休学中とのことです」
竜の話が他人事には思えない。柚依と重なる所があって単なる噂だと聞き流すことができなかった。
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