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どこにでもある、学校の七不思議…。それは、この学校にも同じように存在していた。
「……真夜中の音楽室?」
悪友の言葉に、空は心底嫌そうな顔をする。当の悪友―――雪哉は、そんな空にはお構いなしにうんうんと頷く。
「それってアレだろ?夜中に音楽室から、ピアノの音と歌声が聴こえるとかっていう……」
曖昧な記憶を手繰り、空は言う。
「そうそう。俺とお前でさ、その謎解明してみない?」
普段怖いものが苦手なはずの雪哉が、やけに積極的に誘ってくる。その事実に、空は一つの仮説を導き出した。
「……雪哉、そんなにネタがないのか?新聞部は」
図星を突かれ、雪哉は一すじの冷や汗を流しながら言葉を失う。
「頼むよ、一緒に来てくれ!俺一人じゃ、絶対無理だからさ」
「だから、嫌だって言ってるだろう?」
雪哉は両手を合わせ、必死に空に頼み込む。空は勿論、そんな七不思議など信じてはいなかった。だが何よりも、夜中の学校に忍び込むなんて面倒事はしたくなかったのだ。
それでも、しつこく頼み込む雪哉に付き合わされて、仕方なしに夜の音楽室へ向かう事となってしまった。
「まったく、面倒な……」
「ゴメンってば。今度、何か奢るからさ」
呆れたように文句を言う空に、雪哉は苦笑しながら謝った。どうやら雪哉は、部内のジャンケンで負けたために、今回の事を押し付けられたようだ。臆病な雪哉の事だ。いざ幽霊とご対面などという事態になったら、自分を置いて逃げるかも知れない。そんな事を思いつつ、空は本日何度目かわからないため息を吐いた。
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