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空は、言葉が出なかった。今まで特にやりたい事など、考えた事もなかった。だからこそ、幽霊になってまで音楽をやりたいと思う絢芽の言葉には衝撃を受けたのだ。
「…何かスゲーな。俺なんか、今までそんな事考えた事もないしさ」
空は、素直に思った事を口にした。
「なぁ…また、ピアノ聴きに来て良い?何か、君のピアノ気に入っちゃってさ」
「え…?」
空の言葉に、絢芽は驚いた。
「気味悪く…ないの?」
「別に。だって、普通の女の子だろ?」
不安げな絢芽の言葉に、空はけろりと答えた。
「じゃ、今日は帰るわ。明日、鍵開けとけよ」
そう告げると、空は音楽室を後にした。
…理由などない。ただ、また聴きたいと思っただけだった。
翌日、顔を合わせるなり雪哉は平謝りしてきた。
「空、ホンットにゴメン!」
「…もうお前の頼みなんか、金輪際聞かないからな」
「ゴメンってば~。…それはそうと、幽霊の正体わかったか?」
そんな雪哉を軽く睨み付け、空は何も答えずに教室へ向かった。
だが、尚もしつこく雪哉は尋ねてくる。空は痺れを切らし、ぶっきらぼうに言い放った。
「お前が叫んで逃げたから、幽霊も驚いて消えたんじゃない?あの後、すぐに声とか聴こえなくなったし」
嘘をついた。何故か、彼女に静かにピアノを弾かせてあげたかった。
真夜中…空は、再び学校に来ていた。昨日あぁは言ったものの、一晩で自分を信用してくれたとは考えにくい。音楽室が開いてなかったら、それはその時考えよう。そう思い、空は音楽室に向かった。
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