玄関先の品

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 得意先に向かった際、乗った電車が送電不具合で停車。クーラーが効かなくなった車中に二時間近く閉じ込められ、もうそれだけで軽い脱水状態。  しかもその後、事故の影響か何かは知らないけれど、辿り着いた駅の自販機は売り切れ続出。売店も営業していない。駅の外へ出ても自販機全滅。得意先近辺はそこそこの田舎で、近くにコンビニにの一つも見当たらない。  最初は『冷たい水』とか『冷たいお茶』とか思ってたけれど、ついに耐えきれず、得意先までのルート上にある公園の水飲み場にすがりついた。  温い生水をあんなに美味く感じたのは、学生時代の部活後以来だ。  こんな一日だったから、水分を欲するたびにあの水筒のことを思い出した。  それからも、時々家の玄関先には、普通ならばありえない品が置かれることがあった。  ガムテープ、サングラス、国語の辞書…。  どうしてこんな物がと、毎回首を捻ったが、何故かそれらは、俺のその日の行動の中で必要になる物ばかりで、いつしか俺は、玄関先に物があった日は、それとなく同じ物を持って、あるいは通勤途中に入手して行動するようになっていた。  でもさすがに、今日のこれはどうするべきか…。  玄関の傍らに置かれている拳銃。  これ自体は玩具だが、水筒の時のように、完全に同じ物ではなく、水筒=水分のように、連想できる品が必要になることも何度かはあった。  今日要る品が玩具ならば、形状が拳銃である必要はない。となるとやはり、必要になるのは拳銃=某かの武器ということになる。  武器…それも、拳銃なんていう、かなり物騒な品が必要になる状況って何だ?  いったい今日、俺はどんな目に遭遇するんだろう。 玄関先の品…完
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