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いずれの御代のことだったでしょうか。
その帝の後宮には、数多の女性達が暮らしておられました。
その中にたいして位は高くないのですが、一際御寵愛を受ける方がいらっしゃいました。
その位の低さから帝のおわす清涼殿(せいりょうでん)から遠く離れた淑景舎(しげいしゃ)に住まうその方を、これからは淑景舎の別称をとり桐壷更衣(きりつぼのこうい)と呼ぶことにいたしましょう。
更衣とは帝の妃のうち位の低いものを指す言葉です。
父君の位により左右されるのですが、父君が大臣以上の女性になると同じ妃でも女御(にょうご)と呼ばれ、帝の正妃である中宮(ちゅうぐう)は女御の中から選ばれたのです。
この帝にはまだ中宮がいらっしゃいませんでしたが、事実上の中宮はいらっしゃいました。
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