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何かに顔をこすられている
獣の匂い
嗅ぎなれた、獣の
重いまぶたをなんとか開ければ、真っ黒い何かがそこにいた
自分の顔をなんとか動かせば、起きたことに気がついたのかそれは、ジェイは目を開けて私を見た
紅黒く見える目で
「おはよう、エイプル」
低い声が心地よく頭に響く
「...はよ」
ジェイは体を起こし、今度は手で私の頬を撫でた
「起きれる?」
「...あぁ」
なんとか重い体を起こす
気だるい
疲れが取れた気がしない
でも、起きなければ
仕事の時間だ、今日は昼に取引もあったきがする
そう、ある
だからジェイが迎えに来てるんだ
行かなきゃ
そう思っていると額に何か少しだけ、ぬくもりを感じた
ジェイがたまにやってくるやつだ
私の額にキスをする
機嫌を取るみたいに
なんでやるかはわからないけど
「じゃぁ、下にいるから」
「...あぁ」
ジェイは立ち上がりさっさと下に向かった
そういえばここは直し屋か
見慣れない風景だと思ったらそういうことか
パッと、遠くにつっ立っている人を見ればそれはリエティだった
目が合う
自然とその後ろの人間にも目が行く
情けない顔をしている、フィックスだ
昨日は随分迷惑をかけたし、後で謝らないとな...
とりあえずさっさと顔でも洗おう
そう思い、なんとか立ち上がり、なんとか洗面所まで向かって蛇口をひねった
鏡に映し出された自分の顔を見て、思わず口角があがった
まるで死人見たいな顔だ
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