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たどり着いたのは、知らないビルの4階だった
来たこともない喫茶店らしきお店で、中はコーヒーの匂いで満たされていた
私たちが中に入ると、店長さんらしき人がマッドさんを見て笑顔を浮かべる
知り合いみたいだ
「久々だね、マッド」
「あぁ、奥の席使うぞ」
「どうぞ」
マッドさんはそういうと迷うことなく店の奥に向かった
窓際の広間が見える、ソファーが向かい合った席だ
位置的には確かに店の一番奥で、入口からは仕切りや距離のせいか見えにくい
マッドさんはどっかり座ると、私の顔を見てきた
座れ、ってことかな
私もそそくさと席に付き、思わず窓の外に視線をやる
マッドさんと正面から向き合うのは少し、なんだか気恥ずかしい
「昼飯は」
急にマッドさんがそう言った
そういえばもうお昼前だろうか
確かにお腹は少しすいた
「まだ、です。マッドさんは?」
「俺もまだだ、なにか頼むか」
「いいですね」
あ、でも...
思わずポッケを探る
...お金、あまり持ってない
「金は気にするなよ、俺が出す」
「えっ?!」
驚いて思わずマッドさんを見た
初めて、ここに来てから目があった
「一応そういう関係だし、年上で男だし、収入もあるからな」
「で、も」
人に奢られるのはなんだか苦手だ
少し...プレッシャーを感じてしまう
フィックスなら気にしないんだけど...
「気にするな、サンドイッチでいいか?」
マッドさん相手にそれ以上何か言い返せなかった
変に遠慮して嫌われたくはなかったし、どう奢らせない言い訳をいえば良いのかも分からなくて
だから私はなんとか笑顔を取り繕って「はい」と返事をすることしかできなかった
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