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あいつと平和に過ごせていたのは最初の一年程度だ それ以降の十数年は、いつも死と隣り合わせだった 最初に毒を盛られたのは、コーヒーだった アナのいれたモノに、いつの間にか仕込んでいた 俺の知っている毒だったから耐性はあったし、風味が違うから妙だとは思って飲むのをやめた あれが始まりだった そのあとはあの手この手とどんどん高度なものになっていった いつの間にか与えた部屋に器具や薬剤を揃え 薬屋の仕事まで初めて、裏の人間と関わりだし、暗殺業まで始め人脈を広げていった 毒の知識や耐性はそのうち俺の知っていた彼女の容量を越えていた 自分を使って、まるでウィズにやられていた時のように実験を繰り返していった そのうち、俺ですら耐性がないものを使ってきた 流石にあの時は死ぬかと思ったし、死も覚悟した でも俺は死ななかった エイプルの作った解毒剤によって、死にそうになるたびに救われた 毒を仕込んだ張本人によって、救われるのだ その度にあいつは言っていた 意識が朦朧とする俺に向かって 「簡単に死ねるわけないだろう?」 そう、言っていた 何度も研究をやめさせようとした 実験だって、暗殺業だって 力づくで止めようとしたことも少なくない その度に、殺し合いになりかけた でもあいつはやめなかった いつまでも、ウィズに与えられたあのリングを、首輪をいつまでも首からぶら下げて 俺を殺そうとしてきた 分かっていた あいつはウィズを、愛していた 家族として、愛していた どんなことをされてもいいと思える程に
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