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教室の戸を開けたら、そこには、自分にそっくりな顔をした女の子がいた。
傍にはテニス部の部長をしている本城 拓也がいる。
この光景は何?
学校一のもて男イケメン君と、ただ女子のtwoショット。
教室の中に足を一歩入れる。と、同時に私は自分そっくりな女の子に
吸い込まれていくのが分かった。
この冴えないダサい子は自分なのか?
拓也が優しくささやいた。
「ずっと前から君のことが好きだったんだ。僕と付き合ってほしい」
私は驚きのあまりお礼を言ってしまった。
「ありがとう。・・・感激です。本城君が私のこと好きだっただなんて」
ちょっと待て。駄目だ!私には、幼馴染の龍二という彼氏がいるじゃない。
すぐさま頭を深く下げた。
「ごめんなさい。付き合っている人がいるの」
拓也はそれでも、ささやいてくる。
「それでもいいんだ。君がそいつと別れればすむことだろ」
突然そんなことを云われても困ります。
龍二とは簡単に別れられる関係ではない。16年という長い歴史で
結ばれてる。
なぜか涙が零れ落ちた。
私は、拓也の胸に抱きしめられながら意識が遠のくのを感じた。
龍二は、教室の戸をあけた。そこには、秋の風を受けながら夕日に
染まる奈々美がいた。
夕日が眩しいのか顔をこちらに向けて机にうつ伏せて眠っている。
怖い夢でも見ているのか涙を流していた。
「奈々美、帰るぞ!」
「あっ!龍ちゃん。委員会終わったの。
私、いつの間にか眠ってたみたい」
夕日を浴びながら二人はいつもの道を並んで歩く。
「変な夢を見たの。テニス部の部長がね。私に告ってるの。
笑っちゃうでしょ!」
「本城の夢を見てたのか?奈々美、泣いていたぞ。もしかして
あれは嬉し泣き?・・・・・・奈々美は奴のこと好きか?」
「違うよ!よくわかんないけど、変な夢だった。
私がもう一人いて、その中に吸い込まれていったの」
「そして、どうなった?」
龍二は興味深そうに聞いた。
「二人が一人になって、本城君がその私を抱きしめてくれた。
でも、その後は、記憶がないの」
「奈々美、お前、もう一人の奈々美に、食われてしまったみたいだな」
「えっ?意味わかんないよ。龍ちゃん」
「足元を見てみろよ。奈々美の影無いじゃないか」
確かに影は一つ。
私がいない。
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