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こぼれ落ちた言葉に、思わず息を呑む。
ーーもしかして彼女は、僕が放り出されたことも、その理由も、帰り方もーー知っている?
僕は思わずラウカに詰め寄り、早口でまくし立てた。
「なあ、ここは何処だ?僕は日本から来たんだ。ここから日本へはどう帰ればいい?信じられないと思うんだけど、気がついたらここに居て……何もわからないんだ。記憶喪失かもしれないし、手持ち金もほとんどなくて……」
そこまで吐き出すように言い切った。気がついたら、違う国にいました!なんて話を、ラウカは顔色を変えもせず聞いていた。笑う事なく、ただじっと僕を見据えて。
「ーーそう、やっぱり」
「やっぱりーー?」
呟かれた声に、詰め寄ろうとしたが、彼女は視線だけでそれを制止した。
「ついてきて、ユウヤ。私も全てを知っているわけではないけれど」
「……ああ」
有無を言わさぬ物言いに、わずかにたじろぐ。射殺すような視線が、僕の発言権をすっかり奪っていった。
ーーここは何処なんだろう?ラウカはどうして剣なんて持っている?さっきまで教室だったのに、何故。
頭でぐるぐる堂々巡りする疑問。それを再度ぶつけるのも憚られ、僕は黙って少女の背中を追う。
流れるような銀髪、赤い羽飾り。青い糸で刺繍が施された、白のローブ。左腰には無骨な鞘が揺れている。
ーーそのどれもが現実離れしていて。
振り返った少女の瞳が、更にそれを強調する。
「……あぁ、そういえば」
じっと、後ろ姿を見ていたはずなのに、気がつけば目が合っていた。言い忘れてた、とでも言いたげにはにかむ。
「ようこそ、イアルディアへ」
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